「だが同じ3時間を家で家族と過ごしても、何かをしたという実感は得られず、その時間を家族と過ごしていなかったとしても特に問題は起こらない。」
結構前にこちらの記事を読んで、この本を読んでみた。
52個の、人生を幸福に過ごすためのコツが集められた本で、多分著者の方が結構な幸福論マニアなんじゃないかと思うけど、色々と参考になった。
ただ、育児中に細切れに読んだので読む端から忘れてしまい、kindle版で良かったなあと思った。目次がそのまま52個の索引なので分かりやすい。また読もう。目次はこんな感じ。
目次より
・考えるより、行動しよう──「思考の飽和点」に達する前に始める
・なんでも柔軟に修正しよう──完璧な条件設定が存在しないわけ
・大事な決断をするときは、十分な選択肢を検討しよう──最初に「全体図」を把握する
・支払いを先にしよう──わざと「心の錯覚」を起こす
・戦略的に「頑固」になろう──「宣誓」することの強さを知る
・必要なテクノロジー以外は持たない──それは時間の短縮か? 浪費か?
・幸せを台無しにするような要因を取り除こう──問題を避けて手に入れる豊かさ
・謙虚さを心がけよう──あなたの成功は自ら手に入れたものではない
・自分の感情に従うのはやめよう──自分の気持ちから距離を置く方法
・ものごとを全体的にとらえよう──特定の要素だけを過大評価しない
・買い物は控えめにしよう──「モノ」より「経験」にお金を使ったほうがいい理由
・自分の向き不向きの境目をはっきりさせよう──「能力の輪」をつくる
・静かな生活を大事にしよう──冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する
・SNSの評価から離れよう──自分の中にある基準を見つける
・自分と波長の合う相手を選ぼう──自分は変えられても、他人は変えられない
・思い出づくりよりも、いまを大切にしよう──人生はアルバムとは違うわけ
・そそられるオファーが来たときの判断を誤らない──「尊厳の輪」をつくる その3
・性急に意見を述べるのはやめよう──意見がないほうが人生がよくなる理由
・嫉妬を上手にコントロールしよう──自分を他人と比較しない
・解決よりも、予防をしよう──賢明さとは「予防措置」をほどこすこと
・読書の仕方を変えてみよう──読書効果を最大限に引き出す方法
・「心の引き算」をしよう──自分の幸せに気づくための戦略
・形だけを模倣するのはやめよう──カーゴ・カルトの犠牲にならない
・組織に属さない人たちと交流を持とう──組織外の友人がもたらしてくれるもの
・期待を管理しよう──期待は少ないほうが幸せになれる
・本当に価値のあるものを見きわめよう──あらゆるものの90パーセントは無駄である
・自分を重要視しすぎないようにしよう──謙虚であることの利点
・自分の人生に集中しよう──誰かを「偉人」に仕立てあげるべきではない理由
・内なる成功を目指そう──物質的な成功より内面の充実のほうが大事なわけ
……など52章
付録にこの52個のtipsのために著者が参考にした文献や引用がついていて、その中に面白いものがあった。それがタイトルにした文章。自分が子育て中だから気にかかったんだと思う。
6 戦略的に「 頑固」になろう
・『 ザ・ニューヨーカー』誌に掲載 されたクレイトン・クリステンセン のインタビュー記事 に、 彼が語ったという、管理職 の人たちの家庭が崩壊しがちな理由が書かれている。「オフィスで3時間働くと、仕事がはかどれば達成感を持ち、はかどらなければ即座に落胆を感じる。だが同じ3 時間を家で家族と過ごしても、何かをしたという実感は得られず、その時間を家族と過ごしていなかったとしても特に問題は起こらない。そうして どんどんオフィスで過ごす時間が長くなり、 利益率の高い案件や、仕事 の成果がすぐに形となってあらわれる案件をこなしているうちに、お金を 稼いでいるのだから、家にいないのは家族のためだとさえ思うようにる。 ( MacFarquhar, Larissa: »When Giants Fail«. In: The New Yorker Magazine, 2012 年 5月 14 日)
ロルフ・ドベリ. Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 (Kindle の位置No.4963-4969). サンマーク出版. Kindle 版.
ああー達成感なーと思った。
そして、思い当たる人多いんじゃないかなあ、と思った。
子育て中の辛さの一つに、家事育児には達成感がない(&それですら邪魔され続ける)というのがあるけれども、まあそれは、(子を誰かに預けて)たまに思いっきり掃除をしたり、あと、自分の「達成感の指標」自体を変えることでどうにかやっていける。というかどうにかするしかない。
この、「達成感の指標を見直す」機会が持てるのが、子育てがもたらすギフトの一つだと思う。
たとえば、ただでさえ私は元々「仕事」よりも「作業」が好きで、価値としては雑務に近くても、すぐに、毎日、毎時間達成感を得られるものを追い求めがちだったので、子育てをする中で、「目に見える作業の完了」や「物理的に何かが片付く」以外の、一緒にいるだけ、食べるだけ、の中で子や私の中に醸成されていく時間というものに価値が感じられるよう、頭の中を変更中だ。
そして、それはなんだか良いことのように思える。
でも、子供が生まれても、この価値観の再検討に迫られない人の場合。たとえば、夫婦どちらかが専業で子育てを引き受けていて、自分は特に時短も退職も必要無く子供が生まれる前と同じように働いている方の人の場合。
こうなってしまいがちではないだろうか。
頭の中が「3時間を家で家族と過ごしても、何かをしたという実感は得られず」のまま止まってしまう。
引用部はこう続く。
クリステンセンは、社会人人生をふたつのパートに分けようとする人々を たくさん見てきた。 彼らはその前半でキャリアを追求し、 将来のある時点からの後半を家族と過ごそうと考える。だが、いざその頃になってみる と、一緒に時間を過ごすはずの家族はもう彼らのも にはいないのだ。そこでクリステンセンは、日曜には働かないと神に誓いを立てることにした。家族には、土曜には仕事をせず、平日も夕食の時間までには 帰宅し 外が まだ明るければ子どもとボール投げをすると誓いを立てた。クリステンセンはその誓いを守るために朝の3時に仕事に出るときもあったという」( MacFarquhar, Larissa: »When Giants Fail«. In: The New Yorker Magazine, 2012 年 5月 14 日)
ロルフ・ドベリ. Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 (Kindle の位置No.4969-4976). サンマーク出版. Kindle 版.
ちょっと話ずれるけど、昔から、たまに友達にいる「足るを知る」人達が不思議だった。若かったとしても、地位や報酬や達成感や刺激を求めるよりも、身近な人とのゆったりとしたコミュニケーションを大事にする人。自分の家族が大好きで、自分も早く家庭を持ちたいというのが第一の望みの人。
きっと「生産性」を一番にしない人達で構成された家庭で育ったんだろうなあと今は分かる。ずっとちゃんと、その人がどんなあり方でもどんな時間の過ごし方でも、その価値を認められる場に育ったんだろうなあと。
自分の場合は、特に生産性を追い求める親でもなかったんだけど、逆に親に価値観がなさ過ぎてしょうがないから世間を参考にして、「生産性かな?」みたいに私が勝手になってしまった気がする。就職氷河期世代で、値踏みされがちだったし。
さておき、自分が育った家庭の価値観というものは、後で変更はいくらでも可能だけれども、意外と根深いところで自分を縛ったりしているもので、そういうものは、こういう本を読んで解きほぐしていくといいんだろうなと思った。